キンドルの1・2巻11円セールだったので買ったはずが、いつの間にか9巻まで買って読んでしまいました。
──人生ふたつぶん懸けて、叶えたい夢がある。 夢破れた青年・司と、見放された少女・いのり。 でも2人には、誰より強いリンクへの執念があった。 氷の上で出会った2人がタッグを組んで、フィギュアスケートで世界を目指す!
まだ1周しかしていないのでさらっとした感想になります。
特定のスポーツや職業にフォーカスして、その現実をわかりやすく、プレイヤーだけではなく、『業界』についても描いているマンガのことを個人的に『職業体験マンガ』と呼んでいるのですが、この作品もフィギュアスケートに関してその系譜に当たるのかなと思いました。他の作品でいうと、『アオアシ』や『ブルーピリオド』、ちょっとずれたところだと『波よ聞いてくれ』『これ描いて死ね』とかを勝手にそのジャンルに入れています。
現在9巻まで発売されていて、全日本ジュニア選手権編が完結したところです。かなりきれいに話がまとまっているので、読み始めるタイミングとしてはベストかなと思います。
才能のある主人公が才能のあるコーチに見いだされ、その天才性と周囲からの協力、本人の努力をもって前進していくのですが、そこに存在する『天才』や『金持ち』といった調理を少しでも間違えると嫌味が出てしまう要素から、それを一切感じさせないキャラクター造形がとても見事。
フィギュアスケートという競技への描写も非常に真摯でわかりやすく、芸術的な感性で消費されてしまいがちなフィギュアスケートにも、しっかりとした競技性や戦術が存在しており、ロジックがあるのだと教えてくれます。そのうえで、それらをひっくるめた楽しみ方をギャンブルと言い換えてしまう大胆さは本当にすごいとしか言いようがありません。
技の習得も技術の進歩だけでなくメンタルの成長としても描かれており、できる技が増えるごとに主人公が人間的に成長していく様には心動かされます。
本作の気になる点はキャラクターの名字があまりにも複雑であること。作者のコメントを見ると実際の選手名と被らぬよう配慮した結果らしいが、名前が覚え辛く話を読むのが少し大変です。
主人公がオリンピックで優勝するまで僕もファンとして応援し続けたいと思います。