高円寺日記

気が向いたときに更新

羊文学『if i were an angel 』 拝啓、親愛なるMx.へ 

昨日の夜から雨だった。床に入った途端、急に降り出した雨で僕は弾かれた様に布団を出た。洗濯物を慌てて取り込み少し嫌な気分を抱きながら再び眠りに入った。

朝もまだ雨が降っていた。買ったはいいけどいつも空っぽの仕事用のリュックに着替えとスニーカーを突っ込む。リュックサックはいつもと違うパンパンの見た目でどこか誇らしげに見えた。

家を出る。今日はゴミ出しもない。イヤホンを耳にねじ込み傘をさす。サブカルチャーについて熱っぽく語るPodcast、気分じゃない。羊文学を聞く。今日は仕事終わりにライブハウスへ行く。羊文学に会いに行く。

その前に会社。今日も単純な日々が過ぎる。問題も起きず、失敗もなく、成功もない仕事。

夕方、少し早めに仕事を切り上げさせて貰う。外に出ると雨はやんでいた。会場までの約1時間、普段乗らない時間の普段乗らない電車。僕は結構モノレールの乗り心地が好きかもしれないと気付く。

 物販列に並ぶ。後ろには高校生のカップル。グッズを買いすぎると親に怒られるらしい。高校生の頃にライブに行くという習慣はなかったから、そういう事もあるのかと考える。確かにTシャツ一枚3千円はするしタオルも千円はするから、チケット代を考えると結構な出費になる。僕は気にせずに買う。親に叱られることもないし、洋服やタオルはライブグッズで回している部分もあるので必要経費だ。

 雨が降ってきた。荷物と一緒にロッカーに傘を入れてしまったので屋根がある場所に避難。茶の一杯でもしばこうかと考えたが同じ考えの人は多いようで、仕方なくスマホをいじって時間をつぶす。入場時間まであと15分ほどだが、呼び出し番号がかなり後ろっぽいので実質1時間は待つことになりそうだ。

入場。ドリンクチケットをビールに変えて一気にあおる。ライブは手ぶらで楽しみたい。久々の3千人キャパのライブハウス。満員御礼らしく人だらけ。みんな同じ音楽が好きなのだと考えると感慨深いものがある。天井が高い。スピーカーがデカい。人があふれて扉が閉まらないらしい。閉まった。照明が落ちる。ライブが始まる。

 響くバスドラムの音。沸き起こる拍手と声援。まだ落ちている幕に投影されるロールシャッハ検査のような映像は、揺らぎ時折こちらに微笑みかける天使が現れる。1曲目「エンディング」。曲の印象は正直言うとあまりない。ただライブが始まったのだという心地よい高揚感が体を満たした。

印象的なイントロ。幕が上がり姿を現す。2曲目「more than words」。今日は全部聞ける。そう確信した瞬間だった。


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塩塚モエカの透き通るようでいて力強い歌声。河西ゆりかの突き抜ける心地よいコーラスに、フクダヒロアが着実にリズムを刻むドラム。ゆるいトーク。かき鳴らされるギター、ベース、ドラム。3人が作る心地よいグルーブ。ロック。音に満たされるライブハウス。自由に踊る観客。手を挙げる、手拍子を打つ、歌う、揺れる、泣く、止まる。全てが許容される空間。あいまいなグラデーションを楽しむ。

帰り道。 雨はやみ、知っている電車に乗り込む。 東京の夜、星は見えないが新宿は今日も明るい。 心地よい疲労。今日と明日、その境目にまどろむ。

敬具